夜更けのMUSE

　ジョン・レノンが好きなマスターの筈ではあるが、自分が最初に足を踏み入れた時は「クリムゾン・キングの宮殿」がかかっていた。普段はやはりビートルズのかかっていることが多いようだ。今日はイーグルスのライヴがかかっている。マスター曰く「メジャーなものしか聴かないからね」。しかし、メジャーの周辺には関連するマイナーが無数に蠢いているもので、マスターは周辺のマイナーまでしっかり押さえている。マスターの言葉を簡単に鵜呑みには出来ないだろう。
　自分は今でもいわゆるプログレを聞いている。もちろんそれだけではないが、最後はどうしてもそこに行ってしまう。マスターはプログレもしっかり聞いている。ピンク・フロイド,キング・クリムゾン,キャメル,そしてフォーカスもお気に入りのバンドらしい。(マスターはヤン・アッカーマンの最近のアルバムも持っている。)他に沢山のお客さんがいても「暗黒の世界」のB面全部をかなりのボリュームで聴かせてくれたことがあり、他の人達に迷惑ではないかと自分は恐縮してしまうのであるが、マスターはいつも毅然としていて、奇を衒っているという雰囲気が微塵もない。良質な音楽をかけているのだから、迷惑に思う人などいるわけがない、と考えているのかもしれない。
　ここまで読むとまだ足を運んだことのない人には偏屈な爆音喫茶と思ってしまう方が居るかもしれないが、さにあらず。普段はさりげなくロックを B.G.M.として聴かせてくれているコーヒー専門店である。自分はここのフレンチ・コーヒーが好きだ。ヴァリエーション・コーヒー(Variation Coffee)もHOT,COLD共に種類が豊富でホットサンドやピザパイの軽い食事もできる。また、その気があれば、真っ昼間からバーボンやラム、種類の豊富なカクテルを飲ることも可能である。
　いわゆる愛想の良いお店ではない。タイミングによっては入店時に声を掛けてもらえないこともある。だが、そこで落胆してはいけない。まず何かを頼んでそれを口に運んで欲しい。その味から自分が歓迎されていることを知ることができるだろう。
　暫しくつろいだら、マスターに声をかけてみるのも一興。ポーカーフェイスながらも、人なつこそうな目が眼鏡の奥から伺い見られるに違いない。

札幌市中央区大通西16丁目 2-4
TEL:011-614-7999
open:12:00p.m.～12:00a.m.
close:every monday.
IN ROCK cafe

あなたにおススメの記事