マイク・オールドフィールド EXPOSED LIVE (DVD)

ばうまにあ

2015年09月27日 02:51



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1978年。腕に覚えのある者は、フュージョンやクロスオーヴァーへと向かいつつあった時期で、いわゆるプログレッシヴ・ロックは衰退の一途を辿っていた。王たるクリムゾの姿は既になく、ピンク・フロイドも「アニマルズ」ではそのスタンスを社会批判や風刺へとシフトし繊細で幻想的なアプローチは影を潜めた。EL&Pは前年「四部作 Works」を出したが1面を除いてソロ作を集めた構成となっており、統一性に欠けるちぐはぐな感じは否めず、常に驚きを満喫してきた視聴者を落胆させた。そして、イエスですら「究極 Going For The One」「トーマト TORMATO」
で大作主義を捨て、コンパクトなロケンロールを演じて見せ、賛否両論を巻き起こし、初期からのファンだった人々の多くはその席を離れた。

そんな激動の時期に、マイクはLP2枚組で全1曲というプログレ超大作を発表した。「呪文 Incantations」である。イギリスの古くからのトラッド音楽とアフりカン・リズムを融合した、哀愁エキゾチックでドラマチックな楽曲が交響曲の4部で構成された壮大な"プログレ"を展開しているおり、名作「チューブラー・ベルズ」とともにマイクの代表作といってよい作品である。そして、このアルバムのツアーが同年行われ、その模様を収録したのが「Exposed エキスポーズド」
ギターが2人。ベースも2人。キーボードも2人。パーカッションは4人。女性コーラス10人。ヴァイオリン6人。ビオラ6人。チェロ3人。フルート2人。トランペット4人。それにリードヴォーカル1人という大編成でのライヴであった。このライヴで大いに貢献したのはゴングのメンバー、特にパーカッションのムーラン兄弟とリード・ヴォーカルのマディ・プライヤーだろう。ムーラン兄弟のドラムスとマリンバ、ビブラフォンのプレイはエキゾチックでエキセントリックでエキサイティングだ。翌年マイクは恩返しにゴングのアルバム「Downwind」にギタリスト兼プロデューサーとして参加している。
 そしてマディ・プライヤーの妖精のような歌声は地球を飛び越えて宇宙までもを感じさせてくれる。
 これほどまでのライヴ・パフォーマンスはそうそう味わえないだろう。そして、このライヴが映像で残されているというのだから、堪らないのだ。もちろんマイクのことだからオーバーなアクションはなく、演出的にも大人しいものだが、これだけの大編成のバンドがパフォーマンスを繰り広げている姿を見られることは、自分にとっては鳥肌ものである。そして、映像ならではの事にも気づかさせられる。それは大人数の中でも孤立するマイクの姿だ。それは時に他メンバーを突き放しているようにも見えるし、他メンバーに敬遠されているようにも見える。これは、後にレコーディングメンバーなどから明かされた事だが、マイクの完璧主義と、それによると思われるわがままとも取られる行動によってメンバーから白い目で見られたこともあるらしい。マイクはどうも人付き合いが苦手のようで、誤解を生む人柄のようなのだ。と、そんな事まで見えてきてしまうのだから映像記録というものはオソロシイ。とまれ、それくらいリアルで素晴らしいライヴ映像なのだ、と言いたいのである。
 内容構成はDVD1枚目に「呪文」全曲。DVD2枚目は「チューブラーベルズ」全曲が、「呪文」リリースとほぼ同時期に発表された「ギルティ」を挟んで演奏されている。そして最後はアンコールで締めくくり。なんか暫くぼ~っと余韻に浸れる作品なのであります。

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